2025年7月3日、女優・遠野なぎこさんの自宅から遺体が発見されたという報道が世間を大きく揺るがせました。まだ身元の正式な発表はないものの、報道内容や彼女のSNS投稿から「遠野なぎこさん本人である可能性が高い」と見られ、多くのファンや関係者が衝撃を受けています。
直近のSNSでは「私、うつ病なんだって」と心境を明かしながらも、「あたしゃ、まだまだ生きるぞ」と前向きな言葉も残していた彼女。なぜこのような悲しい結末を迎えることになってしまったのか──。
本記事では、遠野なぎこさんの生い立ちや母親との複雑な関係性、そして彼女の精神的な疾患の背景に迫ります。
遠野なぎことは?朝ドラ『すずらん』でブレイク
遠野なぎこさんは1979年11月22日生まれ、神奈川県横浜市出身の女優。1999年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説『すずらん』でヒロイン・常盤萌役を演じ、一躍国民的女優として知られるようになりました。
『すずらん』では、赤ん坊のときに駅に捨てられ、駅長に育てられた少女が実の母を探し求めるという重厚なストーリーが描かれており、多くの視聴者の心をつかみました。
しかし、その物語と彼女の実人生にはあまりにも深い共通点が存在していたのです。
実母との関係──「人生を狂わせた邪魔者」として虐待された幼少期
遠野さんの母親は、18歳で妊娠し、19歳で彼女を出産。のちに両親は離婚し、遠野さんと弟・妹たちは母親に引き取られました。
しかしこの母親は育児よりも恋愛や夜の生活に溺れ、育児放棄(ネグレクト)状態になったといいます。遠野さんは自著やインタビューの中で、次のような衝撃的なエピソードを語っています。
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小学生のころから暴力を受け、殴られたあとに鼻血がバケツに溜まる様子を見ていた
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容姿や性格を否定され「お前なんか醜い」と罵倒され続けた
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母親の不倫話を無理やり聞かされ、不倫相手の男性器の写真まで見せられた
このような身体的・精神的な虐待は、遠野さんの中に深い傷跡を残し、後の摂食障害やうつ病の発症につながっていきます。
子役デビューは「母に認めてもらいたかったから」
意外なことに、遠野さん自身は最初から芸能界入りを志したわけではありません。弟と妹が所属していた児童劇団に付き添っていたところをスカウトされたのが始まりでした。
しかし、芸能活動を続ける中で彼女は次第に「お母さんに認めてもらいたい」という気持ちが強くなり、女優業にのめり込んでいったといいます。
皮肉なことに、母親自身も若い頃は女優志望だったこともあり、娘の成功に嫉妬や敵意を感じるようになり、さらに精神的な攻撃が強まったとも。
朝ドラ主演報告の「たった一言」
1999年、朝ドラ『すずらん』の主演が決定した際、遠野さんは母親に電話でそのことを伝えました。
しかし返ってきた言葉は**「そう」**というたった一言。祝福も励ましもなく、むしろ冷たい対応だったといいます。
それでも娘として母に愛されたい、認められたいという思いは拭えず、遠野さんはその後もしばらくの間、母との関係に苦しむことになります。
20代後半で絶縁、そして母の突然死
結局、遠野さんは20代後半で母親と絶縁。以後10年以上、一切の連絡を絶っていたといいます。
しかし2022年、3人目の夫ががんで亡くなった翌日に、母親は自ら命を絶つという形でこの世を去りました。
この出来事が、遠野さんにどのような心の衝撃を与えたのか──詳細は語られていませんが、「最期まで関係が修復されなかった」事実は、彼女にとって大きな十字架となっていたのかもしれません。
摂食障害との闘い──“教えたのは母だった”
遠野なぎこさんは15歳のころから摂食障害を患っていたことを告白しています。その発症のきっかけを作ったのも母親でした。
「吐けば太らないのよ」
という言葉とともに、摂食行為の方法を具体的に教えられたというのです。当時はまだ摂食障害という病名さえ知らず、「いいことを教えてもらった」と思い込んでしまったと語っています。
その後、体型がガリガリになっても「色気がない」などと批判され、遠野さんは心身共にボロボロになっていったのです。
アルコール依存とうつ病──心の「穴」を埋めたかった
彼女の著書やインタビューによれば、遠野さんは長年アルコールや恋愛依存症に悩まされていたといいます。
「私の心には穴があるんです。母のことや幼少期のことで空いてしまった穴を、男性だったり、アルコールで埋めようとしているんです。」
これは精神的虐待やネグレクトを受けた人々に共通する特徴の一つ。愛情不足を埋めようと必死にもがく過程で、自己破壊的な行動に走ってしまうのです。
母親を“守る夢”を見る悪夢──トラウマの根深さ
遠野さんは、今でも母親や幼少期の記憶が悪夢として現れるといいます。その中でも印象的なのは、「母を守る」夢。
「母は記憶から消そうとしてるのに、夢ではなぜか守っているんです。」
虐待されながらも愛を求め、そして守ろうとしてしまう──このねじれた感情が、遠野さんの心をどれだけ苦しめ続けたかが伝わってきます。
まとめ:心の傷は癒えないまま、遠野なぎこさんの人生は…
「まだまだ生きるぞ」と書かれていた直近のSNS投稿。訪問看護の日常を綴りながら、静かに生きる希望を抱いていた遠野なぎこさん。しかしその裏には、長年癒えることのなかった母親との関係の傷がありました。
親からの虐待、それによる摂食障害とうつ病、依存症──彼女が背負ってきた過去はあまりにも過酷で、誰か一人でも本気で寄り添う人がいれば…と悔やむ声が多く聞かれます。
女優として、ひとりの女性として、懸命に生きてきた遠野なぎこさん。彼女の人生がもうこれ以上苦しみの中にあったのだとしたら、どうか今は安らかに眠っていてほしい。
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